Fate in 英国?
Fate/StayNightプレイ後の落書きを書き散らかし。
以下に出てくる「scarecrow」はオリキャラで、ウェイバー君の
友人(男)予定で書いておりました。
きっと予算報告とか収支報告とか協会に提出するんだろうなぁ…
と考えたのがネタ元です。
Fate/Extra(7/22発売)が電脳世界ネタっぽいので、没ですな(--;

 「いい加減、収支報告くらい電子媒体で寄越せ」
 休暇明けの机の惨状にうんざりと呟く。
どいつもこいつも結構な量になるそれらを紙で寄越すおかげで、分厚い封書が山積みだ。
これからこいつらを確認して、最悪の場合ミミズ文字の解読と手入力。
「あの…」
「はい? あーごめん、ちょっと散らかってて…」
「ライ、ダー…!?」
「はい?」
 ライダー? それってバッタの仲間の1号、2号?
「す、すみません。知ってる人に似ていたもので」
 微妙な沈黙のあと、少年は慌てて頭をさげた。
「へぇ。まあ、世の中同じ顔は3人いるらしいから───で、何の用かな?」
 見かけない顔だけど
「この書類をココへ持っていくようにっていわれて」
 少年が差し出した封筒の中身を改める。
 何種類かの申請書とその控え。雑然としたそれらは期限も形式もまちまちで渡した側の
悪意を少なからず感じる。
「了解。うちの手続きしておくから、コレとコレはココに出して、こっちは各自保管。そ
れからこっちの書類は、悪いけど書式変更前のヤツだから書き直さないと受理されない」
 新人イジメに古い書式渡すって、了見の狭い阿呆もいたもんだ。
「とりあえず、そっち先出してくるといい。必要なモノは揃えておくから」
 簡単な地図を記したメモを付け、少年を送り出す。
「さぁて、くだらねぇ嫌がらせしてるヤツは後で吊すとして、とっとと片付けますか。
───BootUp。Login scarecrow」

 紙の山の中、作動音と共に薄明るいディスプレイが浮かび上がる。


 コンコン。
「はい、どうぞ」
 ほどなくしてノックされたドアから顔を出したのは赤銅色の髪をした先刻の少年。東洋
人というのを差し引いても、高校生にしては少し小さいかな。
「さっきはどうも…」
「いらっしゃい。君の名前、衛宮士郎で間違いない?」
 書面を確認しながら本人確認。
「あ、はい」
「じゃあ、書類はこの中に一式揃えたから、後は本人の署名を入れて提出すればいいよ」
 署名だけっていっても、結構な枚数あるけどね。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。ああ、お茶いれるけど飲む?」
「あ、いや、多分遠坂が待ってると思うんで…って、あれ?」
「?」
 少年の戸惑いにあわせこちらも首を傾げる。
「あの…日本語、ですよ、ね。さっきから」
「君、日本人でしょ? だから日本語で話してるんだけど…俺の日本語、変?」
 確かに、日本語で話すのは久しぶりだからどこかおかしいかもしれない。
「変じゃないです。ただ、ちょっとびっくりして」
「まあ、基本英語だわな」
 ここ、一応イギリスなわけだし。
「そうなんですよねぇ…」
 へにょり、と少年の眉が下がり、溜息が一つ。言葉の壁、か。言語による意志疎通がまま
ならないというのは確かにストレスだろう。
「必要なら携帯型の翻訳機手配するけど?」
 ああ、その前に。
「君、携帯電話使える?」
「はぁ。一般的な使い方でよければ」
 ふむ。
「じゃあ、パソコンは?」
「メールと、ホームページの閲覧ぐらいは…」
 そういえば、昨今日本の学校では授業で『情報』なんて科目があるんだっけか。
「十分、十分」
 表計算ソフトが使えればなおよしだけど、あまり期待はしないでおこう。
 魔術師って輩は機械音痴が多い。思考の方向性が一般人と違うのだろう、多分。
「こっちの鞄がうちからの支給品。ノートパソコンが1台。精密機器なんで丁寧に扱ってね。
ログインIDとパスワードはこっちの封筒に入ってるからそれぞれ自己責任で管理すること。
パスワードは必ず自分で変更すること。住所、氏名、電話番号、生年月日をパスワードに使
わないこと。パスワードを本体に貼らないこと」
「───何か、すごく基本的なこといわれてる気がするんですけど」
「その基本的なことが守れないヤツが大量にいるんだよ、これが」
 魔術師に限らず、世間一般システム管理者、担当者にとっての悩みの種である。
「本体破損したのでなければ、小一時間で今の状態に戻るから、どうにもならなくなったら
持ってくるといい」
「本体を壊したら…?」
「ここで対応できるならバラして直すけど、お手上げならメーカ送り」
「えーと、その、費用は?」
「基本的にうちの経費。ああ、ひょっとして、遠坂嬢は壊し屋(クラッシャー)?」
 あ、う、え…と言い淀むあたり、あながち外れではなさそうだ。
「とりあえず、この辺からはじめる?」
 手帳のようなサイズのそれはいわずとしれた携帯ゲーム端末。
「元々子どもをターゲットにした筐体だから壊れにくいよ」
 象が踏んでも…なペンケースには負けるが、壊れにくさは電子機器の中では随一ではなか
ろうか。
「そうそう。コレ、おまけね」
 ちゃり、とUSBメモリを手渡す。
「? 何ですか、コレ」
「んー、お部屋用洗剤? 盗聴器とか無効にするためのプログラムいれといたから、試しに
部屋で使ってみるといいよ」
 ひょっとしたら、ひょっとするからねぇ。
「盗、聴器…?」
「そう、盗聴器」
 聞き間違いじゃなくて、盗聴器。
「俺が直接掃除に行ってもいいけど、そこまで信用できないでしょ」
「あ、いや…その…」
「あー、言い方が悪かった。魔術師って、自分の領域に他者が入るのを嫌うでしょ。面識の
少ない、得体の知れない輩を警戒するのは当たり前だから自衛につとめてね、って話。本当
珍しい話じゃないから気をつけてね。隠しカメラって場合もあるから」
 私生活駄々漏れの魔術師って、どれだけ迂闊なんだか。
「は、い…」
「俺からの注意点はそんなとこ。何か質問は?」
「あ、いや、特には…」
「じゃあ、何かあったらココに連絡してくれ」
 直通の電話番号とメールアドレスを記した名刺。
「はい。色々ありがとうございました」
 さわやかな礼儀正しさで、少年は去っていった。


 コンコンコンコンコン。
慌ただしいテンポでノックされる扉。
「開いてますよ」
 コンコンコンコンコン。
「開いてます」
 コンコンコンコンコン。
「はいはい、開いてますって―――扉を開けて招いてもらわないと入れないような狐狸
妖怪の類ですか、あなたは」
 3度目の応答と共に扉を開けると、見知った顔が眉をしかめる。
「差し入れだ。どうせ、食べていないのだろう」
「ご明察。何か飲みます?」
「ああ」
 そういいつつも、カウンターの内側、機器が稼働する範囲に入ろうとはしない。
「いつ見ても壮観だな」
 いくつもの機器が同時稼働するフロアに落ちた呟き。
「あなた方がやってることと大差ないと思いますけど? 構築式を用意して、組み上げ
て起動する―――魔術もプログラムも一緒でしょうに
2010.07.23 00:51 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Fate関連

- CafeLog -