七夕-塔の上より
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「おー、賑やか賑やか」
街のランドマークとなっている塔の上、眼下の賑わいに目を細める。
「飲むか?」
「もらう」
ありがとう、と礼を返し、最高導師とも大賢者とも呼ばれる昔なじみから杯を受け取る。
「星に願いを、ねぇ」
森の木々よりも高い塔の上から見上げる空は遮蔽物もなく満天の星空だ。
「お前の願い事は? デュシス」
「んー?」
願い事、ねぇ。
「星に願いをかけるような乙女ちっく要素が私にあると思うか?」
叶わない願い、叶えてはならない願いならあるけれど、口にしたところでどうなるものでも
なくて、はぐらかすと、盛大に咳き込まれた。
何だ? 『乙女ちっく』の威力か?
「んじゃ、大賢者様が長生きしますように」
「何だ、それは」
不機嫌そうにしかめられる眉。
「何って、お星様への願い事」
先刻、お前が振ったネタだろう?
「お前の仇討ちも、お前に引導渡すのも面倒くさいから、死因は自然老衰でよろしく」
ひらひらと手を振ってみせる。
「面倒くさいからヤダ、とはいわんのだな」
「いってほしいのか?」
メンドウクサイカラ、ヤダ―――指一本動かさぬと宣誓するにも等しい自分的絶対の拒否。
「いや、少し意外な気がしてな」
つきあいが長い分、こちらの性格もよく知ってるからの発言だな。
「正直、世界の命運なんてどうでもいいとは思うし、お前倒した何者かとか、ネジの飛んだ
お前相手にするとか厄介極まりないし、面倒くさいのは保証付きだよなぁ」
想像しただけでめまいがする。
「ふん、俺に勝つつもりか?」
何、さらっと俺様最強発言してるかな、大賢者様。
「まあ、なるようになるでしょ」
負けない程度にはなんとかするさ、多分。